氷海用自動観測ステーション1号機の観測継続のための氷上作業
海洋観測研究部 畠山清
Kiyoshi HATAKEYAMA
海洋観測研究部 中村亘
Toru NAKAMURA
1. はじめに
氷海川自動観測ステーション(IOEB:Ice-Ocean Environmental Buoy)1号機は、北極海の海洋〜海氷〜大気間の水、熱の輸送および物質循環過程を精密に観測することを目的に、米国のウッズホール海洋研究所(WHOI:Woods Hole Oceanographic Institution)と当センターとの共同により平成2〜3年度に建造され、平成4年4月26日、アラスカ北方約280kmのボーフォート循環の多年氷野に設置されたものである1〜3)。その後、同ステーションは海氷とともに漂流し(図−1)、数多くの観測データを人工衛星を経由して送信してきた。しかし、平成7年12月には、各センサーが有する電池が切れたため主要な観測を終了し、平成8年には、送信用電池の容量切れによる送信電波の途絶により、位置が不明となり、回収が不可能となることが懸念される状況になった。それに伴い同機にアクセスし、電池や主要センサーを交換する観測継統のための氷上作業を実施した。
この氷上作業は、平成8年4月16日から28日の13日間、北極海氷上にテントを張り、計6名がキャンプをしての作業となった。作業内容は、北極海氷上における気温-20〜-30℃という環境の中で、厚さ約3mの海氷からIOEB1号機を掘り出し、海中に垂下する長さ110mにおよぶ海洋観測センサーを引き上げ、データ送信用のメイン電池や数種類の観測センサーを交換し、新たに再設置するという条件の厳しい作業であった。
なお本文中で用いている氷上キャンプの現地時刻は、グリニッジ平均時(GMT)よりも4時間遅れた時刻である。この時刻はモールドベイにあるカナダ政府の気象観測所が用いている時刻に合わせたものである。
2. 事前調査
IOEBのデータは、アルゴスシステムを経由して研究室のコンピュータに送信されてくる4)。このテータにはIOEBの位置も含まれており、誤差精度は直径150m以内にIOEBが68%の確率で存在するというものである。平成8年4月11日に得られた北緯79°30.0'、西経131°22.2'
図−1 IOEB1号木機の軌跡
前ページ 目次へ 次ページ
|
|